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つまみぐい人生100

薄味から濃い味まで。

クリスマスに出会い喫茶に行った③〈出会った男性〉

やってみた クリスマス 婚活

 

 

もじもじしながら「…ホテル」

 

トークルームへ移動し、赤いカーテンを開けると、男性が奥に座っていた。

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目が相当悪いのだろう。レンズの厚さが5mm以上あり、

虫眼鏡を目に当てたようレンズ越しの瞳は横に膨張している。

年齢は27歳というが、見た目は30半ばだ。

髪は角刈りで身体はひょろっとしている。これは「キモい」に分類される人だ。

 

年齢、来店回数など一通り話したあと聞いてみた。

 

「今日クリスマスイブじゃないですか。なんでここに?」

「そうなの、いないもん。相手いないの。」

女々しい口調で答える。

「イブでいい出会いがないかなーと思ってね」

それで文字通り出会い喫茶か。

 

「前回の利用のときはどうでしたか」

「めっちゃはずかしいですけど…はずかしいな…」

もじもじしはじめ、にやついた顔でこういった。

「…ホテル」

うわ。初対面でキモい男性からホテルの話を聞くのはキツイ。

この人がホテルに行くところなんて考えたくもないのに頭にちらついてしまう。

 

「まぁねホテルはね、今日はクリスマスだしね…。」

男はホテルへの展開を匂わせたが、

私にとって、出会い喫茶の目的は食事をすることだ。

タダでごはんが食べることが自分へのミッション。それが精いっぱいだ。

 

丁重にお断りをすると「せっかくジャンケンに勝ったのにな」と言われた。

聞くと、誰が一番はじめに私と話すか男性同士でジャンケンをしたらしい。

 

小学生の男子がかわいい女の子を目当てに揉めているような、

そんな対象に今更とはいえなるなんて。

一瞬高揚感があったが、こんな場所にこないと味わえなかったんだと、

すぐに虚しさに浸食された。

 

 「軽いやつって何ですか」

 

こんな形で次々と男性と話していく。

話題は、来店の動機、利用回数、普段の生活、年齢、今回の目的などだ。

 

中でも一番焦りを感じたのは6人目のこの人だ。

 

眼鏡をかけた50代で、波平のようなサイドにだけ髪が残った禿げ方をしている。

仕事先の人に似ていて妙な気分だ。

 

「普段は何しているんですか?」

「ツムツムですね」

ふざけたボケを返してきた。

「あーはっきり言わなきゃダメですね。仕事はなにしているんですか?」

「就活中です」

こんな調子であらゆる情報をはぐらかす。

 

「前来店したときはいかがでしたか?」

「あんまり覚えてないんですけど、○○さん(私)超かわいいんで」

「無理やり話変えてきましたね…!」

男性は低く落ち着いた声で交渉してくる。

 

「だからエロいの入っていいのかなって。まぁ少しですね。」

「そのご希望には答えられないですね…」

 

「大丈夫じゃない?方針変更すれば…憲法改正するわけじゃないし。初対面だからエッチするのは、あんまりよくないかな…と。」

「はぁ…」

 

「ちょっと軽いやつ」

「軽いやつって何ですか?」

「たとえばね…お口のやつとか…」

 

初対面でエッチはできなくても口でやるくらいならいいでしょう、というロジック。

とんでもない。

 

その後も私がいくらハッキリ断っても男性はなかなか諦めようとはしない。

 

「ほんとだめですか?ほんのさらっと、さらっとだから!時間にして30分もかからないと思うよ。20分もかからないかな」

 

「時間にしてすごい短いですよ。時間に換算すると、お互いに有益じゃないかなと思うんですけど」

 

「大それたものではないと思いますよ。ごはん食べる感じでさらっと」

 

あまりのしつこさに逃げられないような焦りを覚えた。

無視して部屋から出てしまおうか。

 

その割には「名前なんだっけ」と私の名前を覚えられない。

おじさんの記憶力というのは残念である。

「何度聞いても名前が覚えられないっていうことはその程度なんですよ」と諭すが、

ストップウィッチが鳴り響くまで交渉が終わることはなかった。

 

 茶飯交渉成功!

8人目。利用するのは3回目だという50代後半男性。

スーツ姿で恰幅がよく、四角い眼鏡に整えられた白髪の髪型という身なりで、

プロフィールには真相は不明だが「社長」と書かれている。

 

「おこづかいは?」

「せっかくなので千円くらいはほしいです!」

「千円あげるんだったらさ、カラオケでメニューあるじゃん?カラオケにしない?」

食事をするのに密室のカラオケを選ぶ。

これは危険だ。口調は柔らかいが怪しい。

 

「カラオケじゃなくて普通にごはん屋さんがいいです」

「でもカラオケやだっていろんなメニューあるじゃん。いやなの?」

「いやー、カラオケは…いいです。じゃあ千円なしでもいいです」

もういい。おこづかいは諦めた。

 

「でも私そういう行為はないですよ。それでもいいですか」

「うん」

「ほんとですか」

ついにきたか!

 

「そういうのダメな理由はなんなの?かわいいコみんなそういう希望だからさ」

「え、そうなんですか」

「君がいやな理由ってなに?」

「そういうつもりで来てないからです。ごはん食べて、ありがとうございます、で終わります。それでもいいですか」

しっかりと再確認をする。

「うん、いいよ」

 

交渉成立!!やった!!

 

「エッチはしないけど、下ネタ話すくらいならいいんでしょ?」

 

…まぁそれくらいは対応しようか。

8人も話した疲労感と後の予定もあったので

これ以上時間をかけられる余裕はなかった。